目次
「大変なんだ!片足が急に動かないんだよ!」
という電話からはじまった、父の認知症。
気ままな一人暮らしを楽しむ父の生活を守るべく、
数々の対策を講じ、みるみる回復。
発症して二年経った今も、笑って一人暮らしを楽しむ父のエピソードです。
この記事は、家族が認知症になった時、最初にやるべきことや、介護においての心構えについてのヒントをお話していきます。
現在86歳。要介護 1 。
元気でいられるいくつかの理由は
・近所に住んでいる彼女の存在
・介護サービスを「ふんだんに」利用していること
・音楽
だと思っています。
現に発症してから、みるみる回復していきました。
認知症には、種類があるようで、
父の認知症の種類は、脳血管性認知症です。
主治医によると、数年前の軽い脳梗塞の時の後遺症らしく、血管の詰まる場所によって、認知症の症状が違うそうです。
1. 対策
1-1 すぐにやったこと2つ
- 介護の手配:ケアマネさんに相談(無料)
国が行う介護制度を使うには「ケアマネさん」という介護のスペシャリストに、
介護メニューを考えてもらいます。
地域包括センターへ連絡すると、すぐに家まで来てくれます。
※「地域包括センター 〇〇市」 と検索するとすぐ出てきます。
この時注意することは、実際にお世話になりたい地域の地域包括センターへ連絡すること。
うちの場合は父親の住んでいる地域の地域包括センター。 - 病院:脳神経外科へ
脳神経外科へ連れて行き、脳血管性認知症と診断されました。
実は、父は私に連絡する数日前、自分の判断で整形外科へ行っていました。
その流れでMRIの撮影もしましたが、原因がわからないとの診断。
ここで注意したいのは、整形外科の先生はあくまで ”足の機能” にしかフォーカスしないということです。
まずは、医療に関しての、「ど素人」が
”どの科を受診しなければいけないのかを、判断しなければならない”
すでに認知症を発症していた父には、とうてい判断できるわけないですね。
父の彼女も、医療知識はありません。
まさか認知症と足がつながっているとは思いません。
こうやって、病気の発見が、遠回りになってしまう人は多いのではないでしょうか。
しかしながら、過去を思い返してみると、数年前に近所の主治医から
”ちょっと認知症の疑いがある”
と、言われたことがあったのですが、
当時の私は父を見て全くそうは思わなかったので、
「まだ大丈夫だろう…」
と重く受け止めていませんでした。
やはり、家族の判断だけでなく、医療従事者の言うことは、適切だったんだな…と今になって反省いたしました。
1-2 フルコースの介護サービスでほぼ万全
- デイサービス
- 毎日ヘルパーさんに来てもらう(夕方)
- 彼女に来てもらう(毎朝)
【デイサービス】
「ツクイ」というデイサービスへ通っています。
サービス内容は素晴らしく、
先ずはどんな嵐でも車で送迎。
施設に到着すると、おやつとお茶のカフェタイム。
お風呂へは、何人もの女性スタッフが付き添ってくれるので、
父はとても嬉しいらしい。※たまにエロオヤジ(笑)すみません。
その他、カラオケや歩行の機能訓練もしてくれます。
※今はコロナの影響でカラオケはできません。
【ヘルパーさん】
介護保険の範囲内(要介護1)で、毎日夕方にヘルパーさんが訪問してくれます。
掃除や夕飯を作ってくれて、話し相手をしてくれます。
時には買い物もしてくれます。
【父の彼女】
父と知り合って、もうかれこれ40年以上。
今ではお互い子供達も巣立ち、一人暮らし同士。
誰よりも気持ちの通じ合う、一つ年下の彼女。
スープの冷めない距離に住んでいて、明るく元気に毎日顔を見せてくれ、
父のことは、
「最近は忘れっぽいのよ〜」
くらいにしか思っていなかったらしい(笑)
毎朝、朝ごはんや飲む薬を出してくれたり、事あるごとに訪問してくれます。
ある日、父の彼女が足の手術で1ヶ月ぐらい入院をしてしまいました。
すると、父は途端に元気を無くし、いつもの大好物の「かっぱ寿司」へ連れて行っても、食欲はないし、あげく泣き出してしまうほど。
私がいくら励ましても、一向に元気が出ないので、やむなく入院中の彼女へ電話を。
声を聞けたことで、少し落ち着き、なんとかお寿司を少しだけ食べることができました。
その後は、毎週お見舞いに連れて行き、顔を見ると嬉し泣き(笑)
彼女が退院してくるまでは、その繰り返しでした。
父にとって、毎日そばに居てくれる父の彼女の存在は、想像以上に大きいものでした。
2. 認知症でわからなくなったこと

- 日時、時間
- お金の単位
回復したとはいえ、少しずつ症状は変化しています。
日時がわからなくなる関係で、薬をいつまで飲んだのかがわかりません。
彼女や、ヘルパーさんに管理をお願いしています。
3. 家族の心構え
一言でいうと
”気負わず、できるだけたくさんの人の手を借りる”
うちの場合は、
・朝の薬の管理は、彼女。
・夜の薬の管理は、ヘルパーさん。
というように、分担してお手伝いしてもらっています。
人に頼んでばかりで、心苦しい思いも無いわけではありませんが、
ここを割り切って考えることが重要だと思っています。
私が同居して介護しなければ…
とは考えません。
彼女に全部お願いすることも、あえてしません。
なぜなら、やはり一人で介護をするということは、身体的にも精神的にも、とても大変だからです。
彼女も、高齢に加え、足も悪いので頼り過ぎないように、ヘルパーさんには掃除や夕飯をお願いしています。
また、
”遠方に住んでいる私が行かなくても生活できるシステム”
を整えておくことが、とても重要なのではないかと思います。
このように、介護に関わる側の体制を分散させることで、
本人も気楽なようで、楽しそうに暮らせているようなのです。
たくさんの人との会話も生まれます。
そして、介護に携わる側の一人一人の負担も激減します。
この考えに至るには、祖母の認知症の経験や
自分の夫を、看取った経験からです。
10年前に、44才の主人を、すい臓がんで天国へ見送りました。
病気がわかったのは、まだ籍を入れる前でした。
付き合い始めて1年半。
同居を初めて半年。
余命3ヶ月の時に、病院で結婚式を挙げました。
壮絶な闘病生活で精神的にも、身体的にも辛い時期に、夫婦共々救ってくれたのは、
周りの家族や友人、介護関係者の方々でした。
とはいえ、その時は、どうして良いかわからず、
一人で頑張りすぎてしまった場面もたくさんあり、
結果主人にも辛い思いをさせてしまった事もありました。
それでは本末転倒だな…とつくづく感じた経験から、
”一人で頑張りすぎない”
ということは自分だけの問題ではないのだな…
と思うようになりました。
4.音楽の力
明るい父が、回復に向かったのは、
たくさんの人が父と関わってくれていることだと思いますが、
もう一つ ”音楽の力” も大きいのではないかと思っています。
パーソナルソングという動画をご存知でしょうか?
表情を失くしてしまった認知症の人に、思い出の曲を聴かせるだけで、
表情が一変する様子がわかります。
祖母の認知症の時は、
特別養護老人ホームに入居して居ました。
当時、私はヤマハの講師をしながら、
チームで音楽療法のボランティアをして居たので、
施設へエレクトーンを運んで、大規模なイベント演奏をしたり、
一人の時は、小さなキーボードを持参して、
祖母の枕元で、童謡を弾いて一緒に歌っていました。
ちなみに、祖母の大好きだった曲は「かえるの唄」でした。
旅立つ数日前まで、喋れなくなっても、
この曲を弾くと声を出して歌ってくれました。
音楽の力には本当に驚かされました。
父のデイサービスでは、コロナ以前はカラオケがありました。
コロナの影響で、残念ですが、今はやっていません。
そこで登場するのが、”家でできるカラオケ” です!
すごいマイクがありまして、たったの¥1,980なのに、スピーカーもエコーも付いてるのです。
先日、半月ぶりに会いに行き、
音楽療法もかねて、
父の18番の「奥飛騨慕情」を
このマイクで歌ってもらってきました(笑)
鍵盤楽器のキーボードを持って行き、
生演奏で弾く時もあります。
彼女も呼ぶと、より一層張りきるのですが、
いつも、自分の唄で感激して泣きながら歌うキュートな父です(笑)
このスピーカー付きのカラオケマイクが、かなり有能なのでご紹介します。
Bluetoothで、iPhoneやスマホからの音楽を飛ばし、一緒に歌うことができます。
エコーも効くので、カラオケボックスへ連れて行かなくても、かなり雰囲気出ますよ。
もちろん、CDなどで音楽をかけながら、マイク単体で使うこともできます。
ちなみに、うちではiPadでYouTube映像を流し、
音楽はマイクから出して歌っています。
まさに、”おうちカラオケ” です!
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5.車椅子のいろいろ
父が認知症を発症した時は、外を歩くことも大変だったので、
スーパーや病院では車椅子に乗せていました。
電動自転車であっちこっち自由に動き回っていた父だったので、
自分の足で進めないのがすごくつまらなそうでした。
今では、杖を使い、だいぶ自力で歩けるようになりましたが、
そんなこともあり、車椅子の人や介護される側の人たちの心理を考えるようになりました。
そんなある日、フジテレビのノンフィクションという番組で取り上げられていた、すごい車椅子を発見しました。
普通の座るだけの車椅子ではありません。
「コギー」という車椅子で、自転車のペダルに似た漕ぐタイプの車椅子です。
楽天検索したら出てきたのでリンクを貼っておきます。
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びっくりするのは脳性マヒの方や、長い間半身不随で足を動かしたことのない方が、その車椅子に乗り、足をペダルに固定すると、漕ぐというより、自然と足が動き、少しずつ自転車をこぐように前に進むのです。
何よりも、車椅子に乗った本人が一番嬉しそうに笑っていました。
足を動かした経験が無い人の足が自然に動くって、ある意味奇跡ですよね。
自発的に楽しめる車椅子。
足が動くので、血液の循環も良くなりますね。
座るだけで、まるで遊園地に来たような日常が、送れるのかもしれません。
6.父のおもしろエピソード
元、沖電気の技術者だった父は、
買ったばかりの4Kテレビやその他の電化製品の使い方を忘れると、すぐに分解します(笑)
「急におかしくなっちゃったんだよ」と言って。
頭の体操かな…とやらせておきますが、
何度もテレビの設定がおかしくなり、
その都度、電気屋さんに来てもらったりしています。
ある時、父が掛け時計も分解してしまい、
私は通販で、新しい大きめの時計を送りました。
その後、父の家に行くと、なんと
部屋に大きな掛け時計が2つ並べて掛けてありました(笑)
大笑いした後に、訳を聞いてみると
「二つ並んでると、時間の確認ができるんだよ!」と。
なるほど(笑)
認知症の父は、時計を見ても、何時かわからなくなることが多く、
一つより二つの時計で確認ができる事で、
”今” を把握できていたみたいです。
父なりに、工夫をして暮らしているところを目にすると、可愛らしいな、
と愛おしくなります。
7.まとめ
認知症と一言で言っても、症状は人によりさまざまですが、
うちの父は、まだ比較的軽い方なのかもしれません。
これから進行するかもしれない…という不安はみんな同じです。
でも、向き合う姿勢や考え方は、同じなのではないかと思うのです。
介護にも、子育てにも共通して言えるのは、
”共に楽しむこと” ではないでしょうか。
ただ、こればっかりは余裕がなければそれも無理です。
そこで、
”気負わず、割り切って、人の手をたくさん借りること”
が大切です。
一人きりで背負ってしまうと、
疲れはててしまいます。
本人に当たってしまったら本末転倒です。
そこは割り切って、絶対に無理してはいけないのです。
その道のプロや、得意な人にどんどん力を発揮してもらい、
本人と家族は良い関係でいられることが大切だと思うのです。
それは、回り回って本人の為になるんだなとつくづく感じます。
これから症状が重くなるのか、軽くなるのか、現状維持か…
先のことを考える必要はなく、
今、この時をどう楽しみながら生きていくのか…
をシンプルに考えることが大切なのだと思います。
少し、視点を変えてみる。
少しの工夫で。
認知症は、本人が一番傷ついていて、困っている。
と、専門家は言います。
周りの人が、本人にちょっと教えてあげる、ちょっと手を貸してあげる。
そんな概念で接していけたら良いのではないでしょうか。
たくさんの人の手を借りて、
フッ…と一息ついて、また笑顔で接することができたらいいですね。
2021年11月19日更新
2021年6月4日に、父は奥飛騨慕情を聴きながら天国へ旅立ちました。
もっともっとたくさんの思い出を作りたかった。
でも、父の満面の笑顔は私の心の中でいつまでも輝き続けています。
最後まで読んでくださり感謝いたします。
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新たな認知症ケア【ユマニチュード】とは
フランスで考案された「ユマニチュード」と呼ばれる手法が注目されています。
認知症ケアに悩まれていらっしゃる方、また介護施設で働いていらっしゃる方へのおすすめ動画です。
反抗的になってしまうのには、理由があるのです。
す。
介護される側の心理がわかれば、対応が変わり心穏やかな介護に変化します。
それには、これまでの方法を考え直す意識改革が必要なのです。
どうぞ、参考にしてみてください。
尊厳を保ち、人間らしさを尊重する”絆”を作る介護です。
見る、話す、触れる。この三つの行動で優しさを伝えることが大切と、考案者のイヴ・ジネストさんは言います。
YouTube>> TBS NEWS 新たな認知症ケア「ユマニチュード」とは【報道特集】より
ユマニチュードについてのYouTube動画サイト▼
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